カネコさん
ある冬の夜。
一人の男がカネコさんにプロポーズの言葉をかけた。
「人生棒に振ってみないかい?」そう言って
流浪生活にカネコさんを引き込んだ。
カネコさんは電気が無いと動かないので
かなり流浪生活は堪えたらしい。すべてはカネコさんの前の男がいけなかった。
寂しがりだった彼は
人に捨てられて寂しがるよりは
先に全部捨ててしまおうと
身の回りに多すぎる物事に別れを告げるべく。
新生活の準備をしていた。そして彼は別れる物事のすべてに名前をつけた。
電気ポットにはハイジ。
革張りのソファーにはたけし。
愛用のマグカップにはベルトーチカ。
全自動炊飯器はカネコさん。カネコさんはアビコさんと一緒に店先に並べられた。
言っておくがアビコさんは古いGMの冷蔵庫だ。
アビコさんの方が性格的にはきちんとしていた。
カネコさんは全自動だったけどそれだけだ。しかしある冬の晩。男はカネコさんを選んだ。
店番のおじさんは奥でコタツに入っていて
男がカネコさんを口説いていたなんて知らなかった。
ともかく店にはまだアビコさんが残っている。
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