地球一部破壊団

 

 

第1話 「いきなり涙の敗北宣言」の巻


とにかく、僕は、ネクタイも何も無しに、五番街を
北に向かってどこまでも歩いて行ったんだ
閉園時間を過ぎた移動遊園地で
青いオーバーやらを着た女の子が木馬に跨って
お兄さんらしい男の子が見守っている
女の子は短い銀色のサーベルを器用に振り
金色の輪を必ず掴まえる
係員は黒人のお爺さんで
操縦パネルのハンドルを静かに回す
おまけのおまけのおまけの1回
延々と回り続ける木馬をみながら
僕は地球が動いているのを発見してしまった
耳の底で笑い声が聞こえると寒気がして
両肩をかたく抱きしめたが腕は短すぎた
青いオーバーやらがひらひらするのを眺めて
男の子と僕の2人はインチキな地球を
今夜、全て壊して歩こうと誓った
夜食のビスケットと水筒を背負って
零時に噴水に集合
ついて来ちゃったんだもの
そういって背中から出てきた
茶色いオーバーに着替えた女の子
まあいいだろう
縄跳びの出来る同志はいた方がいい
サーベルの先をチャリンと鳴らして
地球一部破壊団の結成
僕らの武器は音符
使い方は大声で歌うこと
マシンガンのように音符を撃て撃て撃て!
寝静まった鳩達が迷惑そうにぼやいて
黒い窓に灯りがともっておじさんの怒鳴り声
それでも僕らは透明だから大丈夫
スポンジ煉瓦の中で冷め切った
夕ごはんのスープよひっくりかえれ!
終わってない宿題もあの娘に送った手紙も
ぜんぶぜんぶ燃えてしまえ!
町中の乾電池を集めて
夜に遊園地を勝手に動かす
一番速く走る木馬を選んだら
地球の回転をうまく使って
夜の動きにあわせて駆けまわれ!
水筒にこっそり詰めてきたスコッチを
馬と一緒に飲みほせ!
秒針より速く!のろまな時計塔を飛び越せ!
贅肉に化けるだけの菓子工場を襲撃だ!
書き殴れ五線譜!スペアの楽譜まで歌いつくせ!
墓場の骸骨はまた死ね!
寝ている乞食を踏まないように
黒い森のふくろう団を蹴散らし
地球一部破壊団の名乗りをあげろ!
花屋を叩き起こして
止まった地下鉄のパイプに芝生を植えさせろ!
夜に夢をみている場合じゃない
目を覚ましてコートを羽織れ!
町で一番高い塔の上に宝物を飾り付けろ!
寝ぼけ眼のインチキ占い師を麻袋に詰め込め!
退屈な本屋にオレンジジュースをばらまけ!
ブスなキャサリン先生の顔に絵の具で彩色だ!
油彩だって遠慮はしないぜ
夜は支配した
裁判官は煙突に詰め込んだ
幻覚キノコ色の雲が地球を殺す
衛兵が黒高帽の中に飼っている
女王様の猿たちが手強いが
息が止まる前に歌える歌を全て歌うんだ!
いまやブックメーカーのオッズは五分!
笑顔で笑うな!
シリアスな問題を抱え込め!
地球儀でクリケットをして
唇から血を流しながら破片を噛み砕け!
君は地球にキスをする
博士の発明した孤独スプレーで
石畳の広場に巨大な落書きを描け!
苦しげに出てきたふやけた芋虫どもの
低脳な感傷にマスタードを擦り込み
コルク栓で口を塞いでしまえ!
苦しがる涙と涙が出会う所を
この国じゃ川と言うんだ!
オリジナル設計の石橋を掛けて
欄干を走り朝日に向かって
さあ!
いまだ敗北の叫び声をあげろ!
重油を積んだ船のスクリューが
とどめを刺しにやってくる
僕らはここで一度死ぬ
心配するな
歌った歌の数だけ今朝は街に鳥が増えている
たとえ革ジャンは着られなくなっても
また夜には誓いの下に再び集おう
誇り高き地球一部破壊団。

 

#990619 ライ麦後、酔って即興。

 

 

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