北風の吹く日、
ドーナッツ売りはやって来た。

 

 

ドォーナッツ。ドォーナッツの穴はいらんかねー。

 なんだ、ただの紙皿ではないか。

とんでもございません。
ここにはれっきとしたドーナッツの穴が5つものっております。

 む。どういう事だね?

例えば、旦那さまがドーナッツを食べるとき
ドーナッツをかじってもそこにはまだ、穴があるでしょう。
もしも半分食べても、4分の3を食べても。

 ちょ、ちょっとまってくれ。
 4分の3もドーナッツを食べたら、
 それは穴でなくへこみになるではないか。

なんと…。怖ろしい事をおっしゃいますね!
ドーナッツの穴、そのものはなんの変化ないのでございますよ。
いえ。むしろドーナッツの穴は、ドーナッツ部分を殺すことでこそ
永遠にその姿を完全なものとして留められるとさえいえるでしょう。

 うさんくさいなあ。
 で、なんだ。その紙皿にはドーナッツの穴がのっているというのだな。

ええ。我々の工場にて
ミスタードーナッツさんから直接仕入れたドーナッツを
ベテランの職工達が食べる事で製造しております。

 じゃあ試しに、その上の3つほど頂こうか。
 ちなみに何の穴だね?

これは、フレンチクルーラー、オールドファッション、
そして手前のはエンゼルクリームになります。

 ばかもの!語るに落ちたな。
 エンゼルクリームに穴など存在せぬわ。

ぬう、ぬかったあ!

 

 

 

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