−−とあるパイロットの回顧録−− のら☆のる

戦闘を開始して、600秒が経過した頃……
中国本土からの援護射撃により、眼下のテムザック04は赤い爆炎を血飛沫のごとくまき散らしながらその姿を消した。
「これで、10機……!!」
テムザック04を破壊した数を呟き、ボクはふと、先行者パイロットの間で流れている噂を思い出した。
−−−『日本の白い悪魔』。
「……噂かどうか、この目で確かめてやろうじゃないの」
冗談めかして呟くものの、ボクの乗る先行者はかなりマズい状態だった。
ダメージレベルは既に80%を超過し、補給物資・援護射撃の弾薬も底をついている。『白い悪魔』どころか、アシモ相手にすらやられかねない。
「……!」
目の前を横切る影−−−アシモ!!
反射的にドリルパンチを放とうとした瞬間、そいつの白いボディは炎とともにスクラップと化した。
「!?」
味方の援護射撃−−−いや、違う!!
モニターには、はっきりと映っていた−−−白い、影が。
アシモじゃない、テムザックでもない……『禍々しい』、その言葉が最も似合う、『白い悪魔』。
「本当に……いたのか……!!」
相手は、エースパイロットすら容易く葬り去ると言われる悪魔。こっちは、援護も期待できないボロボロの先行者−−−まるで、デザートナイフ一本でクジラを解体しろと迫られた気分。つまり、絶望的。
考えるより早く、ボクは先行者を駆った。
自慢の機動力で悪魔の砲撃を避け、肩の辺りから切り離されたコンテナには目も暮れずその白いボディに肉迫する。
「道連れだ!悪く思うなよ!!」
そして先行者の自爆スイッチに手をかけた瞬間……凄まじい震動がコクピットを襲う。
「背後からの命中弾……!?」
後方の映像を示すサブモニターには、展開したコンテナがミサイルを吐き出す映像が映っている。
「……!!うわあぁぁぁぁぁ!!」
そして目を戻したメインモニターに映っていたのは、『悪魔』と呼ぶに相応しい……『爪』。
次の瞬間、先行者はただの屑鉄と化していた。

『勝てっこない』−−−あの時、確かにボクはそう思った。
しかし、初めて戦場に出、無線誘導式小型攻撃機装備のテムザックに会った時も、そう感じた。
やるしかない。いつかヤツの白い身体を、日本軍の墓標にするまで。
中国の人民を守っているのは、ボク達先行者のパイロットなのだから−−−
仲間に救助され基地へと帰還する輸送機の中……ボクはそう、心に誓った。


 

[213]
投稿者:にょる 投稿日:2001年05月10日 (木) 13時06分

話は数日前にさかのぼる…
荒野に重なるASIMOとAIBOの残骸…
「へへ、こんなものじゃニッポンも大した事ないな…大丈夫か?」
「あぁ、なんとかな…」

しかし、二人とも浮かべている笑いは苦笑いである。
ガトリングの弾は底をつき、ジェネレータの破損から中華キャノンも
発射できない、ドリルもいつ壊れてもおかしくない状態だ。
まともに生きているのは通信とレーダーくらいである。
「ま、この分なら、あの噂も恐らく何かの間違いだろうな。」
あの噂…数日前、別方面の前線部隊を全滅させた「白い悪魔」と呼ばれる機体のことである
「先行者を一撃で引き裂くツメなんて、そうそうあってたまるか」
「ニッポンのことだ…こちらを動揺…ザーーーーッ」
「!?おいッ!どうした!?」
後方から聞こえる爆発音…
しかし、レーダーには何も映っていない
しかし、今、自分の頭上をまた、ミサイルがかすめていった…
「超遠距離攻撃…まさか…」
朝もやのなかに浮かぶ影…巨大なツメだ。
「…ハハ、……冗談だろ?」
シロイアクマ   …T-5…
「…なかなかやってくれるじゃねーか…フッ」
自爆スイッチに手をかける…
そうして、その機体はミサイルの雨の中へ消えていった……


ひとこと読書感想文

シルチョフ兄弟社 … T5投入直後、カミカゼ特攻をかけるパイロットが続出。
SS投稿も絶望的なものばかりが続いた。
この2週間後には先行者1機でT5が6体も倒されるようになるとはねえ…。

シルチョフ兄弟社 … そしていまや30機ですか…。川村さん、体がいくつあっても足りません。2013年ではみてろよ!


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