夏犬ブルース

 

まだ貧乏だった頃に寝ていたベッドを捨てる時、 
痩せていた体の形にへこんだスプリングにふと気がつく。 
それは老トランペット吹きのいびつな唇の形だったり。 
いつもマグカップが置かれているうちに、 
消えない輪染みのついた机かもしれない。 

本当に大切だったいくつかの物事のように。 
足跡しかみつからない犬がきっといる。 

8月31日の夜は一緒に眠って、 
目覚めたら32日がやって来たことにしよう。 
冷凍庫に残ったアイスを朝から片付けながら 
この夏にみかけた犬の話をするだけの日。 
(アイスをぜんぶ食べちゃった子にはやってきません) 

 

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