ひきだしの奥から古い金貨がでてきたので 雪平鍋でとかして金色の馬を作った。
君が賭けた馬が夕焼けの空を駆けてゆく。 羊たちや犬や少年を追い抜いて 金色の馬は夕陽に飛び込んだ。
さっきまで羊たちが寝ていたあたりに 僕も転がってみると背中が暖かい。 このことはまだ地平線が明るいうち 日記に書いて覚えておこう。
なんせ近ごろの僕ときたらひどく忘れっぽい。 この空を毎日塗り替えるには どれだけのペンキがいるんだろう。
ほら。空の面積を求める公式すら忘れてる。 あの金貨にしても君は何に賭けたんだっけ。 そもそも、どうして僕の机にはいっていたんだ。
嘘。それぐらいは覚えてるさ。 金色の馬だけがたどり着ける夜の裏側で 待ち合わせをしているんだ。
僕たちはたくさんの夢をみて、 いちばん長いひとつを手にとって 現実と呼んでみたりする。
ここから夜の裏側まで。 どれだけ長い夢をみられるんだろう。
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