ココ椰子の木を折ったのは誰だ?

 

南の島にいます。

ほんとは救う気のない国籍不明の飛行機が
パラシュートでハンバーガーを落としていきましたけど
もーもー鳴いている牛でもなければ
それはいちど食べるだけで消えてしまうのでした。
それさえ飛んでこなくなってどれぐらい久しいでしょう。

服はやぶれてベルトに
葉っぱをはさんだだけのアンダーパンツ。
とっくに時計は壊れて、
手鏡もスコールに流されてしまいました。
思い浮かべてみる自分の顔立ちは
たぶんいまの顔とは既に違うものなのでしょう。
でもそれをみることもできなければ
みて教えてくれる人もこの島にはいません。

どうやら島は無人島のようです。
全周でも2キロに満たないでしょうか。
数えてみたらヤシの木が47本あって
おかげで食料には困らないですんでいます。
私は木に登れないので
浜辺を歩いている手頃な蟹をぶつけて
そのハサミでうまい具合にヤシの実を切り落とします。
おかげでヤシの木の下はどこも蟹の死体でいっぱい。
もう痛くて素足じゃとても歩けないので
シュロの葉でサンダルを作りました。

ここでは昨日と今日の違いだって
私がそれを意識するかしないかだけのこと。
約束も裏切りも恥ずかしさも何もありません。
何かわるいことやいいことがしたくてたまりません。
蟹を投げるのはいいことでもわるいことでもありません。
ただ蟹が空を飛んでは死ぬだけのこと。
おととい、私は退屈しのぎの新機軸
アンダースローを編み出したけれど、それも飽きました。

ところが今朝、目覚めてびっくり。
ヤシの木が全部切り倒されているではないですか!
僕はこれから犯人を島中さがして
奴を1回殴ったあと、友達か恋人か敵になります。

 

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