マイナス赤頭巾ちゃん


 
ある日、森の中。
 パンをつまみぐいしながら歩くマイナス赤頭巾ちゃんを
 木影からそっと見ている気の善い狼がいた。
 「狼さん、そこで何をしているの?」
 枝の上で昼寝をしていたリスがたずねた。
 「何か俺に助けられることがあればと彼女を見守ってるんだ。」
 リスはこれを連れ添いの耳の遠いリスに耳打ちして伝えた。
 「俺の出番はないかと彼女に何か起こるのを待ってる。…だってさ。」
 「まあ、そんなのとんでもないわ。」
 リス達はヒステリーをおこして狼にどんぐりをぶつけた。

 

 そんなことはつゆ知らず。マイナス赤頭巾ちゃんは
 とくになにごともなく、おばあちゃんの家にたどり着いた。
 トン、トントン。
 「おばあちゃん!パンを届けにきてあげたわ。
 あ、でもね、途中でね、わるい狼におそわれて
 干しぶどうだけほじくられちゃったの。ごめんね。」

 

イラスト…梅丘四〇六 

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