オレンジ・ペコー氏の確率論

 

ある蒸し暑い晩。
オレンジ・ペコー氏は自分の若い頃の日記帳をひらいて
残り少ない白紙を前につぶやいた。

人生はトランプのようなものだよ。
何かをひとつ選べば、何かがひとつ消える。
ぜんぶでクイーンは4人、キングも4人。
誰かがエースを引けば、誰かのエースが減るのさ。
そして忘れた頃にジョーカーがやってくる。
どうやら私はトランプよりダイスの方が好きだね。
6を何十回続けて出そうが
誰かの6が減るってわけじゃないんだ。

オレンジ・ペコー氏はキッチンに降りると製氷皿をひねり
砕け散る氷をフルートグラスに押し込んだ。
グレープフルーツジュースの中でからからと
氷の笑い声が浮かんで消えた。

 

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